代表インタビュー

株式会社ミヤケン 代表取締役社長
 宮原 一(みやはら はじめ)

株式会社ミヤケン 取締役 代表の妹
 宮原 元美(みやはら もとみ)

聞き手・ヒトゴト編集長
 清水 宣晶(しみず のりあき)

「人の釜の飯は食ってこい」

 

   
清水 今日は、よろしくお願いします。
この部屋は、、ものすごいたくさん本が並んでますね。
宮原 ここは、ミヤケンの会長の『コックピット』なんです。
清水 なんか魅力的なガジェットがいろいろ置いてありますよね。
創業されたのは会長なんですか?
宮原 創業はその前の、僕のおじいちゃんにあたる人で。
清水 じゃあ、はじめさんが3代目になるんですね。
小さい頃から、「いずれは家業を継ぐ」とは思ってたんですか?
宮原 そうですね。
新卒で勤めていたIT企業のほうにも、
「家業があるんで、そのうち辞めますよ」とは言ってました(笑)。

清水 初めからミヤケンに入らなかったっていうのは、何でなんでしょう。
宮原 父から「人の釜の飯は食ってこい」って言うのは最初に言われてたので、一旦どこかに行かないとなと思ってました。
大学の専攻が「経営情報工学」っていうところで、当時の情報系の先端に触れてしまって。
私大で国立大学とネットがつながっていたり、データセンターを持っていたり、設備が整っていて、それがすごく楽しかったんですね。
それで行き先もIT企業にしちゃったと。

清水 そこはじゃあ、建築関係の人が行く学科じゃなかったんですね。
宮原 専門としては全然違います。製図の単位はありましたけどね。
その中でも、生産系やIT系の人が行く研究室に進んで、就職の時も、どうせなら面白そうなところに行こう、とネットワーク系が強いところを探して決めた感じで。
清水 それは、将来的に実家の仕事をやるっていう上でのキャリアプランではなさそうですね。
宮原 人から見ると、なさそうに見えたでしょうね。
比較的業界の流れが良かったIT系に身を置けて、かえって建築・不動産系の会社に就職しなくて良かったのかなとは思います。
それにITの仕事をやってるといろいろな業種を見るじゃないですか。
会社を経営するってことで考えれば、絶対無駄にはならないだろうなと。
清水 たしかに。いろいろな業種に接しますね。
物流だったり、金融だったり。
宮原 あと生まれた時から、大工さんたちが目の前で仕事をしていて、建築の基本的なところは見ていたっていうこともあって。
最終的に建築・不動産の業界に入る上での最低限の下地はあったのかなと勝手に思ってたので、業界にこだわらなかったということもあります。
清水 ああ!そうか、物心ついた時から建築の仕事を見ていたんですね。
ちなみに作業場って家から近かったんですか?
宮原 家のすぐ近くです。
目の前で、ビィーーーンて電ノコで木を切っていて。
元美 昔はプレカット(加工済みの材木)じゃないので、作業場で材木を刻んだり、ほぞを掘ったりしてたんですよ。
だから、大工さんが仕事をしているところが遊び場で、一斗缶を使って焚き火してお茶してるところで、一緒に火にあたってたりとか。
清水 じゃあ自然に、職人の仕事のやり方を学んでたんですね。
宮原 まあ・・目の前で見てたんですね。
自分が同じことを出来るかどうかは別として(笑)。
清水 家を作るときって、大工さんとか職人さんとのつきあいってすごく大事そうなので、そういう、現場の雰囲気を知っているっていうのは大きいと思います。
元美 それこそ、当時は、お年玉って言ったら職人さんがくれたもんで。

清水 あ、そうですか!
宮原 みんな、正月に挨拶まわりに来てくださるんで、その時に子どもがいると、お年玉を少し渡してくれる。
清水 生活の中で自然に、大人とか社会との関わりがあったんですね。
宮原 お昼ご飯も、母が用意したものを自分たちも職人さんたちもみんなで一緒に食べる、っていう。
宴会も、外にまだ外食のお店がなかったので、家の中の広いスペースでやって。
清水 みんなで一つの大家族みたいな感じで。
宮原 そういう時に、周りが「この子はミヤケンの跡継ぎ」っていう認識だったから、若干刷り込みは入っていると思います。
清水 たしかに、教えたことが無駄にならないと思えば、教えるほうも本気になりますよね。
宮原 親に「跡を継げ」って言われたことは一度もないんですけど、「まあ、継ぐもんだろうな」って。
学科を選ぶ上でも、建築系の学科を目指していなかったわけでは無いんですが、会社経営に繋がるところであれば有りだろうと。
清水 それが、経営情報工学だったんですね。
宮原 入ってみたら、工場系のシステムだったりとか、産業系の情報をやって、旋盤等の工作機械の授業もあったりとか。
最終的に所属していた研究室は「メカトロニクス」っていう、機械を動かす研究をするところで。
その先生が機械を遠隔で動かすことに興味があったみたいで、サーバー用ワークステーションを一台を与えられて、えんえんとそれを触ってたっていう。
清水 その時代からサーバーを触ってたんですか。
宮原 一番面白かったのは、仲間で一人、海外のゲームが好きなヤツがいて、研究室全部を使って10人くらいで「DOOM」をやって。
清水 いいですねえ!
LANで繋いで対戦してたんですね。

宮原 研究室の奥のほうから「メディーック!!(兵士の傷を回復する非戦闘員)」とか「後ろから俺を撃つな!」とかって叫び声が聴こえて。
そんなことを一晩中やってました。
清水 そんな遊びが出来る環境だと、家に帰れないですね。
宮原 そうこうしてるうちに留年が決まったので、所属していた体育会スキー部の合宿でヨーロッパに行って。
「お前、ほんと好きなことしかしないよね」って言われてました。
清水 ぶはははは!
宮原 足りなかった単位っていうのは、結局、興味がなくて行かなかった授業だったんで、「ちょっとは我慢して行け」って言われたりして。
後から考えたら、産業心理学の内容なんて貴重だったなって気がついて、当時は考えが子どもだったなって思ったんですけど。
清水 学生時代は、その貴重さがわからないですよね。
宮原 まあでも、トータルで、学生時代は面白かったです。
ゼミの先生は「こっちは大変だったよ!」って言うと思いますけど。
元美 先生、いまだにお中元送ってくださってますからね。
宮原 恐縮です。もちろんこちらからも、お送りしております。
清水 先生も、印象に残ってるんでしょうね。
宮原 ありがたいことで、いろいろ気にかけてくれたみたいで、学部生ではあまり参加出来ないような研究発表に連れていってもらったり。
遊び面では前半の3年間が、勉学面では後半の3年間はとても濃い時間でした。

 

地元、志木との関わり

 

   
清水 建築とか不動産業っていうのは、いろんな業種の中でもとくに、地元との関わりが深い業種じゃないですか?
宮原 地元との関わりは、やっぱり深いです。
清水 不動産屋のサイトを見ていても、ほとんどが「志木の」とか地名を書いていて、すごく地元に根付いてるんだなって感じました。
頼むほうからしても、地元の土地を知ってる人に頼みたいっていうのがありそうですし。
宮原 そう、現場の土地を知ってる知らないで、段取りの良さが全然変わってくるっていうことはあります。

清水 はじめさんは、地域活動にも熱心に関わっていますよね。
宮原 地域活動と真面目に向き合い始めたのは、ミヤケンに戻って4年目ぐらいの時、11区画分の戸建て分譲を任せられたことがあって。
その時に、町の外から人を呼び込むっていうことをやったんですね。
清水 はい。
宮原 その時に、ご家族に「お祭りはありますか?」とか、「地域にどういうイベントがありますか?」ってよく聞かれるようになって。
「こういうイベントがありますよ」と、紹介はするんですけど、
あれ?紹介しておきながら自分はそこにいなくてもいいのかな?と思うようになったんですね。
清水 地元の人間として。
宮原 それで、もうちょっと地域につながろうと思って。
たまたま、志木の商工会青年部に同級生の友達がいて、お誘いもあったりして、それが地域活動に関わり始めた一歩ですね。
商工会の主催の市民祭りやイベントがあって、僕が出店にいるのをお客さんが見かけると、喜んでくれるんですよね。
清水 それはやっぱり、知ってる人を見かけると嬉しいですよね。
生まれた時からずっと志木に住んでいると、知り合いの人もたくさんいるんですか?
宮原 同級生ぐらいだと、地元に残っていない人もいるんですけど、
親の世代でずっと昔から知ってる人は多くて、「本一(現会長で父)の息子」って認識されてましたね。

清水 うんうん。
宮原 最近の流れとしては、新しく志木で事業を興した人が、地域とのつながりを作るために商工会に入る、っていうことが多いんです。
商工会青年部在籍中の自分の役割としては、そういう新しく外から入ってきた人と、地元の人をつなげるのが一番しっくり来るのかなと思って活動してきたつもりです。
清水 ああ、そういう人の存在は重要ですね。
宮原 地元で長くいる人は、人脈とか根回しとかを大事にしていて、新しく入ってきた人は、そもそも人脈が無い中でも効率のいい動き方を持っています。
そこって、どうしても意見がぶつかるところなんで。
清水 そこを、「まあまあ」と。
宮原 商工会青年部には3年しかいなかったんですけど、良い経験をさせて頂きました。その後もなんだかんだと、お世話になった先輩や後輩にかまって貰ってます。
清水 僕も、これから子どもをどこで育てようかって考えた時、その土地が、お祭りが賑わっているかとか、地元同士のつながりが強いかどうかっていうのは気になるところです。
宮原 いいにつけ悪いにつけ、何かしら一生懸命いろいろやってるっていう地域は、楽しいですね。
お金の無駄遣いだっていう意見もありますが、効率だけを求めていくと、そういうのがどんどん出来なくなっていくので。
多少、物好きじゃないと出来ない、と思うんですが、志木は適度に昔ながらなところが残っていて、伝統はなんとか守りたい、って思ってる人も多いので、やろう!ってなれる人も多い気がします。

 

生活を提案する

 

   
清水 リフォームを専業にする会社があったり、不動産業だけをやる会社もある中で、
ミヤケンっていうのは、両方をやってる会社なんですよね?
元美 そうですね、どちらも。
もともとは祖父が大工で、宮原建設という会社から始まって、家だけじゃなくてアパートを建てる仕事をさせていただいて、そのアパートの管理を頼まれるようになって、不動産業務もやるようになったんです。
清水 ミヤケンは、リフォームの中で、どこが得意っていうのはありますか?
宮原 どこが得意なんだろう・・・
内装?いや、違うな・・
「キッチンとか風呂を替えるのが得意」みたいな、部位で得意っていう感覚じゃないんですかね、どっちかっていうと。
なんて言ったらいいんだろう?
清水 (笑)いや、そこはキーポイントですからね。
なんとか言語化していただいて。
宮原 そのリフォームをやることによって出来上がる生活、をちゃんと提案出来るっていうところが、ミヤケンの得意としてるところなんでしょうかね。

清水 ああ!それは、すごく大事と思いますよ。
宮原 そこを考えないで良いのであれば、もしくは全部自分でわかってやるのであれば、希望の工事だけを安くやってくれるところに行って、直接注文したほうがいいものが出来るかもしれないです、っていう提案も、極論ですが有りだと思うんですよね。
たとえば洗面台をお客様指定の物にちょっと替えたいっていうだけ、細かい事は要らないから安く出来ない?とにかく安く!となると、だったら、それは安いところで買ったほうがいいんじゃないですか?って。
清水 たしかに、言ったままをやってくれるだけだったら、価格が安いところでやるのが一番いいですよね。
宮原 そうなんです。結局、そうなると価格だけの勝負になっちゃうんで。
何で洗面台を替えたいのか。老朽化?使い勝手?普段どういう使い方をする?今困っている事はある?替える事でどういう使い勝手を希望する?などを突き詰めて、「このリフォームをやったら、こう変わる」とか、「こうしたほうが、いい仕上がりになるかもしれない」とか、トータルで生活に対してどうなるかっていうことを確認しながら組み立てていくのが、ミヤケンの得意としてるところなんじゃないかな、と思います。
清水 「これをしたい」っていうよりも、「こうなりたい」っていうことを引き出して提案するっていうことなんでしょうかね。
宮原 そう、その、最終的にどうしたいかっていう形を考えないと、違う方向に行っちゃって、自分の家の価値が下がることもありますから。
リフォーム後のイメージから話しが出来るっていうのがミヤケンの売りでもあるし、そこから話しが出来る人じゃないと、なかなかマッチしないのかなっていうのはあります。
清水 そこがマッチしてないと、たとえ一生懸命やっても、結局、満足度が上がらなかったりしますよね。
宮原 そうなんですよね。
じゃあ安くお引き受けすれば満足いただけるかっていうと、そういうわけでもなくて。
うっかりすると無理くり値段抑えてやったとしても不満が残ったりするんです。
結局、「こんなはずじゃなかった」って。
清水 「こんなはずじゃなかった」って(笑)。
宮原 だから、落ち着いて話しが出来ないと難しいかなってのがあります。
そこは、焦らずやってもらったほうが。
で、やる必要のないことは「必要ない」って言いますしね。
清水 あ、それはありがたいですね。
宮原 あれもこれも変えたらどうですか、って言うんじゃなくて。
無理くり変えてもしょうがないですし、使えるものは長く使って、っていうところですよね。

清水 はい。
宮原 何がよくてウチに頼んでもらってるんだろうっていうのを考えると、やっぱり、話しを聞くっていうところが一番のポイントになってるのかなと。
「なんとなく、こうやりたい」って伝えておけば、だいたいいい感じにしてくれる、って言っていただくことはあります。
清水 なるほど。
リフォームをしたいけれど、どうすればいいか見当がつかない、っていう人ほど、それを汲み取って翻訳してくれる人が、間に立ってくれたほうがいいと思います。
宮原 そうですね。
でも、そうなると、格安工事!みたいな所と価格勝負は出来なくなってくるんですよね。
いろんな相談も受けながらやっていくことになると、普通に物だけ発注するだけと違って、やる事が大幅に増えますので。
そこがなかなか伝わらないっていうのが・・ウチが下手なところと思うんですけど、伝え切れてない部分がありますね。
わかってくれた人の口コミで広がっている状態ではあるので、もうちょっといろんな人にわかってもらえるようになれば、変わってくるのかなっていうのがあります。
清水 単純に価格勝負になっていくと、出来上がる建物の質も下がっていってしまうでしょうね。
宮原 リフォームしてあるんだけどなんか傾いてる、とか、表面的にキレイにしただけで、つなぎが甘くて後ですぐ水が漏れてるとか、見えない部分が実はあまり整ってなかったりとか。
費用だけで考えると、どうしてもそうなりがちな部分があって、建物として住まいとして変なものが残ると、それは負の遺産になってしまうので。
元美 地域で仕事をしている以上、地域の負債になるような建物は残したくないなって思うんです。
空き家で管理されなくなって、周辺環境にいい影響を与えないような建物じゃなくて、ちゃんと建物として長い間機能するモノを残したい。

清水 見えない部分のことは、素人目にはわからないし、安く仕上げようと思えば、手抜きが出来ちゃいますよね。
宮原 どんな施工会社であっても、ムリに安くやろうとすると、どうしてもひずみがきて、ちゃんとやりきれなくなるっていうのがあって。
そこで競争してもいいことないので、注文をする時は、もっと考えて選んでもらえるようになればと思うんです。
注文先は、べつにウチに限らずで。
清水 必ずしもミヤケンじゃなくとも。
宮原 ちゃんとしたリフォーム会社はいっぱいあるので。
そういう意味では、ウチは不動産であったり、住宅であったり、チャンネルは非常に多いので、ミヤケンでやらなくても、紹介することは出来るんですね。
清水 このリフォーム屋さんだったらちゃんとしてるよ、とか。
宮原 たぶん、そこまで出来る所って、もともと住宅関係を長くやっているところじゃないと難しいと思うんです。その後の価値の事まで考えると、工務店で不動産屋もやっているか、逆に不動産屋で工務店もやっているか、じゃないとまず答えられません。
両方やっているっていうのはミヤケンの特徴でもあるので、まあ、とにかく・・いったん相談をしてみてください。
清水 やり始めちゃった後に相談されても、取り返しつかないことありますからね。
宮原 そう、実際に、やっちゃってから「困った」って相談しに来る人もいて、「もうそれは戻れないよ」ってこともあるんで。
なかなか、一般の人が一からやろうとすると、かなり勉強しないと出来ないと思います。
そもそも、「理想の家は三回建てないとわからん」って言われるので。
清水 三回!
普通は、家を建てるのなんて、一生に一回だけですからね。
宮原 だから、最初っから100%うまくいくなんてそうそうないってことなんですよね。
そこをいかに100%に寄せていくのかっていうことが、ミヤケンの役割だと思っていて。

清水 僕からすると、家を建てるとか、リフォームするっていうのは、考えることが多すぎて、何から考えていいのかわからなくなりそうな気がします。
宮原 相談に来てくれるのであれば、とっかかりの部分は何でも相談には乗れますし、
もしその後、他のところに工事を頼むことになったとしても、図面を持ってきて「これ大丈夫?」とか聞いていただければ、相談に乗ることは出来ます。
工事はどこかに依頼済みでも、気兼ねなく相談して頂けるよう、有料の相談サービスもありますので。

 

きちんと作った家は、長く残る

 

   
清水 ミヤケンが、他のリフォーム会社から紹介を受けることっていうのはあるんですか?
「そういうのはミヤケンさんのところが得意だから」って。
宮原 他の業者から紹介を受けるっていうのは、あんまり無いかな?
元美 そうですね。
今、ウチはどっちかっていうと、単純なリフォームよりも、コンサル的な比重のほうが大きいので。
宮原 口コミで、前に頼んでくれたお客さんが「それならミヤケンに頼めば」って勧めてくれるのはありますけど。
そのパターンは、何か具体的な施工を依頼されるっていうよりは、漠然と「困りごとがある」っていう場合が多いですね。
清水 困ってるんだったら相談してみるといいよ、と。
宮原 周りの同業でいうと、しっかりとしているリフォーム屋さんも多いので。
そこがウチに頼むっていうと、設備が特殊な物になるのかな。
ペレットストーブとか、光冷暖など他では扱ってない商材がある場合とか。
清水 自然素材の家もそうなんですかね。
宮原 そう、自然素材も、ミヤケンで扱ってる商材です。
清水 自然素材の建材を扱うっていうのは、技術的に特殊なものなんですか?
それとも、知識が重要なんですか?

宮原 知識が重要ですね。木の性質であったりとか。
だから、技術的にすごく特殊というわけでは・・あ、いや、待てよ。
技術的にも、いわゆる一般的な合板等とはちょっと扱いが違うところがありますね。
施工の方法とか順番とか。
それは、ベテラン大工さんほど、扱いが上手なコトは多いですね。
自然素材の扱いに慣れた大工さんが、ベテランばかりとは限りませんけど。
元美 慣れたベテラン大工さんは木を読むことが出来るんですよ。
清水 ええ!?
宮原 やっぱり、こう、下から上に向かって生えている木を、逆向きに使うのは良くないんですよね。
清水 あ、木を使う時の、上下の方向が。
それを、見ただけでわかるんですね。
元美 私なんかではわかんないんですけど、慣れたベテラン大工さんだと、わかるんです。
年輪に沿って、どう反るかっていうこともわかるので、それに合わせて、反りが出にくいように釘を打っていったりとか。

清水 それは結構重要ですね。
宮原 そこはやはり、大工さんによってクオリティーの違いが出るところです。
大工さんによっては、無垢材の構造材で家を建てたことがない人もいると思うので。
清水 ミヤケンでお付き合いがある大工さんには、ベテランの方が多いんですか?
宮原 そういう人ばっかりでは無いですが、多いですね。
ヒバの木材の土台とか見ると「懐かしいなあ」って言うような。
清水 古くからやっている大工さんからしたら、嬉しいんですね。
自然素材の家っていうのは、ミヤケンとして推しているんですか?
宮原 うーん・・
ガッツリ推してるというよりは、知った上で選んだほうがいいんじゃないですか、っていうところですね。
やっぱり予算のこともありますし。
清水 予算が変わってきますか。
宮原 変わりますね、費用的には上がります。
清水 さっきの話しの、「いいものを残したい」っていうことで言うと、自然素材の家っていうのは残したいものなんでしょうか。
宮原 選択肢の一つ、ということだと思うんですね。
ただ、どうしたら家の環境が良くなったり、建物が長持ちするようになるかって考えた時、残るのはやっぱり、しっかりした工務店で、しっかりした材で建てたもので。
工務店の会である「匠の会」っていうのに所属させていただいているんですけど、「建物って50年で壊すんじゃつまんないよね」って思ってる人ばっかりなんですよね。
やっぱり、ちゃんとしたものを作れば、ちゃんと残るし。
元美 建物を建てる木になるのに、60年かかってるものを、30年だけ使って壊しちゃっていいの?っていう、ライフサイクルコスト的なこともあるんですよ。
宮原 個人的な趣味を究極で言ってしまえば、世の中全部の家が自然素材の家になれば面白いのにとも思いますけど、そこはそれぞれの予算の問題もあるので。
多少資産を持っている大家さんが、いい賃貸物件を建てて、そこにいろいろな人が住んでみる、っていうのも理想形の一つじゃないでしょうか。
清水 まず賃貸として、住み心地を経験してもらうっていうことですね。

宮原 やっぱり家としてきちんと作った家は、長い間残る、っていうのは間違いないです。
それが、結果として自然素材の家である場合もあるし、違うやり方ももちろんあるし。
清水 自然素材の家っていうのは、長持ちするんですか?
宮原 長持ちするための、いろんなことをやっている・・っていうことかな。
細かいことを言うと、筋交いを留める金具ひとつ取っても頑丈で、揺れていじめられても傷みが出にくい金物を使っているような場合もあります。
木自体も乾燥状態の良いものを全部使っていて。
いわゆる集成材は、施工もし易くコスト抑えられるため、一般的に多く使われていますが、結局は糊の寿命で全てが決まるんです。
清水 あ、そうか、木の寿命以前に、糊の寿命が先にきちゃうんですね。
宮原 集成材っていうのは、まだ最近出来たものなので、どれだけもつかっていうのは、歴史が証明していないんですね。
20~30年前に出来た糊がいつまで保つかっていうのはわからないわけです。
元美 例えば、古い寺院で使用されている木材を見ると、環境が整っていれば長持ちする事は歴史が既に証明しています。
宮原 ミヤケンの理念の一つに、建物は社会資産として残せるものを、っていうのがあるんです。
短い期間でもう使えないよね、ってなるものはなるべく建てない。
清水 長持ちするっていうだけじゃなく、糊を使っていないっていうのは、健康面を考えても、良いものなわけですよね。
宮原 長く住んでも、健康を害さない。
でもそれは別に、自然素材の家じゃなくてもいいんです。
集成材の家でも、100年もつ家であったり、うまく化学物質的なものを排出出来るんであれば。

清水 はい。
宮原 人間が将来、どういう環境で住み続けられるのかって考えた時に、宇宙船とかコロニーの中でも生きていくことになると、究極はシェルターみたいなものになっちゃうじゃないですか。
そうすると、結局、全部を自然の物で作れるわけないよね、っていうのが僕の中であるので。
適度にテクノロジーも入れながら、人間にとって良い物が作れるのであれば、それが一番いいんじゃないかとも思ってます。
(2017年7月 柳瀬川 ミヤケン本社にて)